ポンポンが痛い…
そういうポンポンですが東京大学2007年度の理系第1問の解説やります。
[問題]
nとkを正の整数とし、P(x)を次数がn以上の整式とする。整式(1+x)^kP(x)のn次以下の項がすべて整数ならばP(x)のn次以下の項の係数は、すべて整数であることを示せ。
ただし、定数項については、項それ自身を係数とみなす。

[解答と解説]
まずk=2,n=2、P(x)=ax^3+bx^2+cx+dの時とか具体的に実験してみると、わかってきます。
見えてきます。
たぶん。

(1+x)^2(ax^3+bx^2+cx+d)の係数は
3次はc+2b+a
2次はd+2c+b
1次は2d+c
定数はd
これを見ると、(1+x)^2(ax^3+bx^2+cx+d)の2次以下の項が整数とすると定数を見るとdが整数とわかって、次に1次の項をみるとcが定数とわかって、次に2次の項をみるとbが整数で、確かにP(x)の二次以下の項b,c,dは整数になってます。
このメカニズムを見ると(1+x)^2P(x)の3次の係数も整数としたら、(1+x)^2P(x)の2次以下までの係数を整数とするとP(x)の2次以下までの係数が整数となって、P(x)の3次の係数も整数とわかる感じになります。
これを数学的帰納法でちゃんと証明します。

題意をnについての数学的帰納法で証明します。
P(x)=a_mx^m+a_(m-1)x^(m-1)+…+a_1x+a_0
とおいて、1≦n≦mで成立を示します。
これP(x)の最大次数mを固定して、1≦n≦mのすべてのnで成立することを数学的帰納法で証明するって言う設定をするのは何気に難しいところですね。
(i)n=1の時
(1+x)^kP(x)=∑(j=0~k)kCjx^j(a_mx^m+…+a_1x+a_0)
で定数項はa_0です
1次の係数はkC1a_0+a_1です。
だから(1+x)^kP(x)の1次以下の係数を整数とすると
kC1a_0+a_1=N_1(N_1整数)
とおけて
a_1=N_1-ka_0
でa_1も整数になるから(a_0ももちろん整数)題意は成立になります。
(ii)n=lの時題意成立を仮定します。(l≦m-1)

(1+x)^kP(x)=∑(j=0~k)kCjx^j(a_mx^m+…+a_1x+a_0)
のl+1次の項は
kC0a_(l+1)+kC1a_l+…+kC(l+1)a_0
ここでk<iのときkCi=0と定義しておけば、l+1≦kのときと、l+1>kの場合分けを書かなくてよくて便利です。
画像には書き忘れてるけどな。
(1+x)^kP(x)のl+1次以下の係数を整数とすると
kC0a_(l+1)+kC1a_l+…+kC(l+1)a_0=N_(l+1)
(N_(l+1)は整数)とおけて、仮定よりa_0,a_1,…,a_lは整数だから
a_(l+1)=N_(l+1)-kC1a_l-…-kC(l+1)a_0
よりa_(l+1)も整数
よってn=l+1の時も題意成立
(i)(ii)より1≦n≦mとなる自然数nについて題意成立。
と言うように、具体例でやったことを同じように一般的に数学的帰納法で示そうとしてきたわけですが、それでも処理がちょっとややこしいですね。
ここで最初にnとkを正の整数として…ってありますが、よく考えたら自然数の変数がnとkの二つです。
だからkに数学的帰納法を使ってもいいわけです。
そうすると結構簡単になります。
こういうことは、大学の証明問題でめっちゃ悩んだのにもう一つの自然数の変数の方に数学的帰納法を使うと簡単に出来たことよくあったので頭の片隅にでも入れておいてください。

題意をkについての数学的帰納法で証明する。
P(x)=a_mx^m+a_(m-1)x^(m-1)+…+a_1x+a_0
とおいて(n≦m)とおく。
(i)k=1の時
(1+x)P(x)
=(1+x)(a_mx^m+a_(m-1)x^(m-1)+…+a_1x+a_0)
=a_mx^(m+1)+(a_(m-1)+a_m)x^m+…+(a_1+a_2)x^2+(a_0+a_1)x+a_0
b_j=a_(j-1)+a_j(1≦j≦m)
b_0=a_0
b_0,b_1,…,b_mを整数とすると
a_0=b_0
a_j=∑(i=0~j)(-1)^(i+j)b_i
になります。
よってa_0,a_1,…,a_mは整数。
まあこんな厳密にしなくても、明らかに整数でもいいかもしれませんが。

(ii)k=lの時、題意成立を仮定する
(1+x)^(l+1)P(x)=(1+x)^l{(1+x)P(x)}
P'(x)=(1+x)P(x)とおく。
(1+x)^lP'(x)のn次以下の係数を整数とすると、仮定よりP'(x)のn次以下の係数も整数になります。
そしてP'(x)=(1+x)P(x)なのでn=1の時より、P'(x)のn次の係数が整数だとP(x)のn次以下の係数も整数になります。
だからk=l+1の時も成立。
(i)(ii)よりすべての自然数kについて題意成立です。
こっちの方がnと違って単にすべての自然数kについて示したらいいです、何かと楽な議論です。
でも解ければいいわけなので、一番大切なのは具体的な値を入れて実験をしてみて一般の場合を類推するって言う思考です。
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