ちょっとマーガレット呼んできて。
さて、東京工業大学の2008年度前期の第2問、整数と極限の問題をやります。
[問題]

実数xに対し、x以上の最小の整数をf(x)とする。
a,bを正の実数とするとき、極限
lim(x→∞)x^c(1/f(ax-7) - 1/f(bx+3))
が収束するような実数cの最大値と、そのときの極限値を求めよ。
[解答と解説]
伝説の整数問題です。
これは整数が入った式を不等式で挟んで、挟みうちの原理から極限をとるのと、極限の値から定数を決めると言う典型的な問題です。
xを越えない整数を表すガウス記号
[x]
の問題では
1-x<[x]≦x
を使ってぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅやってたら解けました。
それと同じようにして、この問題はf(x)は[x]と微妙に違ってx以上の最小の整数と定義されているので
x≦f(x)<x+1
を使ってぐちゅぐちゅにします。

と言うことで1/f(ax-7) - 1/f(bx+3)をxの不等式で挟みます。
まず
ax-7≦f(ax-7)<ax-6
bx+3≦f(bx+3)<bx+4
です。
これを分数にしなければなりませんがax-7=0とかなら困ります。
ここで東工大2008年度前期第1問でもやったように、求めるのはx→∞の時なので0にならないように十分に大きくとることを極限ではよくやります。
aやbは定数なので十分に大きくとるとって言葉でもいいんですが、x>7/aとしたらax-7もax-6もbx+3もbx+4も0よりも大きくなります。
よって
1/(ax-6)<1/f(ax-7)≦1/(ax-7)
-1/(bx+3)≦-1/f(bx+3)<-1/(bx+4)
だから
1/(ax-6)-1/(bx+3)<1/f(ax-7)-1/f(bx+3)
<1/(ax-7)-1/(bx+4)
⇔
x^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)<x^c(1/f(ax-7)-1/f(bx+3))
<x^c((b-a)x+11)/(abx^2+(4a-7b)x-28)
一応x^cもかけときました。
そしてx^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)とかの極限を求めるわけですが、次数が大きく影響します。
だからb-aが0かどうかで、場合わけが必要です。

(i)a≠bのとき
と言ってもちゃんとやるには、どうやればいいか迷うとこですが例えば
lim(x→0)(x+A)/{(x+1)sinx}
は収束するとする。このときAの値と極限値を求めよって問題があるとすると
分子の極限はAです。
分母の極限は0です。
だからA=0でないと、元の極限は発散になってしまうからA=0が必要だとわかります。
そしてA=0とすると
lim(x→0)x/{(x+1)sinx}=1
と極限値が求まりました。
こうやって必要条件を求めていくように処理をします。
まず不等式の左の方の
x^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)
は正ですがx→∞で発散すればx^c(1/f(ax-7) - 1/f(bx+3))も発散してしまします。
だから収束することが必要です。
x^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)
=x^(c-1)((b-a)+9/x)/(ab+(3a-6b)/x-18/x^2)
で((b-a)+9/x)/(ab+(3a-6b)/x-18/x^2)の部分の極限は
lim(x→∞)((b-a)+9/x)/(ab+(3a-6b)/x-18/x^2)
=(b-a)/ab
です。
と言うことはx^(c-1)の極限は0か定数であることが必要です。
つまりc-1≦0⇔c≦1が必要です。
こうやって必要条件をだすことで、cの最大値の候補は1以下であることがわかりました。
と言うことはもしc=1を代入してlim(x→∞)x^c(1/f(ax-7)-1/f(bx+3))が収束すればc=1が最大値と言えます。
c=1とすると
lim(x→∞)x^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)=(b-a)/ab
でちゃんと収束しているからオッケーです。
不等式の右の方も
lim(x→∞)x^c((b-a)x+11)/(abx^2+(4a-7b)x-28)
=lim(x→∞)((b-a)+11/x)/(ab+(4a-7b)/x-28/x^2)
=(b-a)/ab
でこっちも収束して、挟みうちの原理から
lim(x→∞)x^c(1/f(ax-7)-1/f(bx+3))=(b-a)/ab
で収束することが示せたのでc=1が最大値で、極限値は(b-a)/abです。
このように必要条件から解の範囲を絞って、そこから予想された解が正しいことを証明するって言う論法を身につけておくと難しい問題では役にたつことがよくあります。
(ii)b=aのとき。

このときはやってみたらわかりますが作った不等式
x^c((b-a)x+9)/(abx^2+(3a-6b)x-18)<x^c(1/f(ax-7)-1/f(bx+3))
<x^c((b-a)x+11)/(abx^2+(4a-7b)x-28)
では不等式の評価が悪くてうまく挟みうちできません。
と言うことで
1/f(ax-7) - 1/f(bx+3)
に戻って考えると、a=bなのでもう少し式を整理してから不等式を作れば、精度のよい不等式が出来るかもしれません。
1/f(ax-7) - 1/f(bx+3)=(f(ax+3)-f(ax-7))/(f(ax-7)f(ax+3))
これをみるとf(ax+3)やf(ax-7)がf(ax)で表せたら計算が進みそうです。
また最初の方の話しに戻ってガウス記号でnを自然数とすると
[x+n]=[x]+n
と言う大切な式がありました。
これと同じようにします。
x≦f(x)<x+1
の真ん中をxにすると
f(x)-1<x≦f(x)
で、これを使ってnをたすと
f(x)-1+n<x+n≦f(x)+n
でf(x)+nとf(x)-1+nは隣りあう整数だからf(x)+nはx+n以上の最小の整数です。
だから
f(x+n)=f(x)+n
です。
ガウス記号の問題をやりまくった人なら、こういう変形はほぼ問題はないと思います。
わからないって人は、またガウス記号の問題を解いてください。
また取り上げてみようかなあ。
と言うことでf(ax-7)=f(ax)-7,f(ax+3)=f(ax)+3だから
1/f(ax-7) - 1/f(bx+3)
=(f(ax)+3-(f(ax)-7)))/((f(ax)-7)(f(ax)+3))
=10/((f(ax)-7)(f(ax)+3))
だからこれで
ax≦f(ax)<ax+1
から不等式をつくると
10x^c/((ax-6)(ax+4))<10x^c/((f(ax)-7)(f(ax)+3))
<10x^c/((ax-8)(ax+2))
でここからは同じようにして
10x^c/((ax-6)(ax+4))=10x^(c-2)/((a-6/x)(a+4/x))
だから
lim(x→∞)1/((a-6/x)(a+4/x))=1/a^2
なのでlim(x→∞)x^(c-2)は0か定数であることが必要。
つまりc≦2であることが必要。

c=2とすると
lim(x→∞)10x^c/((ax-6)(ax+4))=10/a^2
また
lim(x→∞)10x^c/((ax-8)(ax+2))=10/a^2
より挟み撃ちの原理から
lim(x→∞)(1/f(ax-7) - 1/f(bx+3))=10/a^2
で収束するからcの最大値は2で10/a^2に収束します。
この問題は難しく見えますが、ガウス記号とか極限の応用問題に慣れてくるとほぼ定石で出来るのでたくさん勉強すればやりやすい問題でもあります。
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